緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第1章 甘露に溺れる地獄
その人気な踊り子の名は、。
舞台の「華」である。
舞台に上がった美しい彼女の姿は、一輪の毒を秘めた大輪の百合のようだった。
光に照らされたしなやかな肢体は、薄絹を纏うことでかえってその輪郭を際立たせ、滑らかな曲線が流麗な弧を描く。
一歩踏み出すごとに、足首に巻かれた銀の鈴が、観衆の鼓動を急かすように高く、鋭く鳴り響いた。
長く艶やかな髪は、彼女が激しく旋回するたび躍動し、夜の闇を切り裂く。
汗に濡れて肌に張り付く数筋の髪が、見る者の情欲を煽るような危うい色香を放っていた。
何より人々を魅了したのは、その瞳の輝きだ。
深く、吸い込まれるような双眸。
そこには気高さと、どこか遠くを見つめるような憂いが同居していた。
観衆はその眼差しに射抜かれた瞬間、魂を奪われ、彼女という熱狂の渦に溺れていく。
この夜の酒場には、不穏な静寂と濁った熱気が沈殿していた。
最前列を陣取った海賊たちの視線は、もはや鑑賞の域を越えていた。
彼らの瞳に宿るのは、芸術への感嘆ではなく、獲物を屠る直前の獣のような、どろりとした飢餓感だ。
「おい、あの腰つきを見ろよ……」
「……あぁ、あの娘で決まりだな」
ねっとりとした視線が、の激しく上下する胸元を執拗に這い回る。
下卑た笑い声が、音楽の余韻を汚すように混じり、彼女の肌に粟を生じさせた。
鳴り止まぬ拍手を背に、は逃げるように舞台裏へと足を踏み入れた。
華やかな照明から遮断された瞬間、濃密な闇が彼女を包み込む。
「……気持ち悪い」
控え室へ続く廊下は、湿った空気が停滞していた。
荒い呼吸を整えようと壁に手を突いたその時、背後の闇が揺れ古びた床板が悲鳴を上げた。
一つではない、複数の足音。
「いい踊りだったぜ、お嬢ちゃん。……近くで見ると、余計にそそるじゃねえか」
吐き気を催すような安酒と煙草の臭いが、鼻腔を突き抜けた。
「……っ!?」
振り返ろうとした瞬間、視界が激しくぶれた。
硬く、太い腕が背後から彼女の細い首を捕らえ、自由を奪う。
叫ぼうと開いた口は、手のひらに強引に塞がれた。
抵抗する爪が男の腕に食い込むが、岩のような筋肉はびくともしない。
逃げ場のない闇の中で、海賊たちの湿った笑い声が、耳元で低く響いた。