第1章 序章
今から10年前――
とある大社は神を失い、一族は滅んだ。
神和住家――代々、玄野大社の祭祀を担う一族。
宮司の娘の私はこの時、8歳だった。
真っ赤に染まる大社からは、鼻にこびり付く、鉄の匂いが充満していた。天から降り注いだ幾つもの矢。眩く光を放つそれは、私の家族を突き刺していく。
母は数多の矢を受けながら、私を大社の地下に隠した。漆黒の狐の像が濃い影を浮かせる。
「かあ、さま……ねぇ、かあさま……なにがあったの…?」
「最、高神……天照大御神の怒りに、触れた……私たちが何をしたと言うのか……
お前だけは、何があっても生き延びるのです。
玄野様はきっと、お前を守って…くれる……」
「……かあさま?……かあさま!!」
冷たい床にひれ伏し、動かなくなった母を何度も揺すった。だけどもう、返事はなく、ピクリとも動かなかった。