夢幻泡影②【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】アンケート開催中
第16章 束の間 奏でるクリシェ【仇名/直接会談】
――メグ、起きて……。
何度も何度も、詞織に呼びかけられた気がした。
けれど、どうしようもなく身体が動かなくて、同じくらい瞼が重たかった。
次第に、緩やかな微睡の中で意識が浮上していく。
頭を撫でる柔らかな感触に、伏黒は瞼を震わせながら持ち上げた。
「……詞織……?」
どれだけ眠っていたのか。
自分でも驚くほど掠れた声で、彼女の名前を紡ぐ。ぼやけた視界がゆっくりと焦点を結び、不安げに揺れる夜色の瞳を捉えた。
「……メ、グ……?」
詞織の顔がすぐに泣きそうに歪む。伏黒は強張った関節を動かし、肘をついて身を起こした。
「……詞織? どうした……?」
「『どうした』じゃない……心配、した……!」
縋るように泣きつく詞織を抱きとめ、震える肩に安堵を覚える。
「あら? 目が覚めたんですね。詞織、あなたが心配で全然 離れなかったんですよ」
見知らぬ女が、やや呆れたような顔で息を吐いた。その容姿に、伏黒は思わず目を見開く。
背中から生えた翼に頭上の光の輪――天使を彷彿させる姿だ。
「わたし、兄さまに報告……」
伏黒の腕から出て行こうとする詞織を、伏黒は無意識に力を込めて腕の中に閉じ込めた。
「メグ? 離して……」
見上げてくる詞織を無視し、細い首筋に顔を埋める。
「仕方ないですね。詞織、星也は私が呼んできてあげます」
女の足音が遠ざかると、詞織が腕の中で身じろぎをした。