夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
――日本の刑事裁判の有罪率は99.9パーセント。
「猫を……飼っていたんです」
面会用の透明ガラス越しに、彼は弁護士の男にそう話した。
「急に警察の人が話しかけてきて、二人三人って増えて……このまま捕まっちゃったら猫が死んじゃうって。飼っちゃダメな決まりで、飼ってるのは俺しか知らないから……」
――岩手県盛岡市で、二〇一六年三月、女児とその母親 計二人の刺殺体が見つかった事件。
盛岡地検は近くに住む大江 圭太を二人に対する強盗殺人の容疑で起訴した。
逮捕までの経緯はこうだ。
大江は巡回中の警官から職務質問中に逃亡し、自宅に駆け込んだところ、追いかけて来た警官が血のついた刃物を発見――現行犯逮捕。
後のDNA鑑定で、刃物の血痕と被害者のDNAが一致している。
大江は一貫して犯行を否認。証拠となった刃物に関しても――……。
――「拾ったんです。俺のじゃない。後で警察に届けるつもりでした」
無理がある。誰もがそう思っていた。
職務質問から逃げたのもそうだ。大江は昔、知人が薬物を使用していたことが原因で、不当な聴取を受けたことがあるとのことだ。
分かっている。その全てに無理があるのだと。
けれど、大江の環境――住み込みで働いているNPO法人のことを考慮すると、あり得ない話じゃないと思えてくる。