第1章 不器用な情熱【獄寺夢】
獄寺くんと付き合い始めて、半年。
いつもは鋭い瞳で周囲を威嚇している彼が、私と二人きりになると、とたんに耳まで真っ赤にして俯いてしまう。
そんな彼が愛おしくて、あたしたちは半年かけて、ようやく手を繋ぐのがやっとという、じれったいほど純粋な恋をしてきた。
「……わりぃ、片付いてねーけど。適当に座ってろ」
ある日の午後。初めて招かれた彼の部屋。
男の子の一人暮らしらしい、少し散らかった、けれど彼の好きな科学雑誌やタバコの香りが微かに漂う空間。
緊張でガチガチになっているあたしの顔を、獄寺くんがふと覗き込んだ。
「……? 顔、真っ赤だぞ。……気分でも悪いのか」
「ち、違うの。……ただ、獄寺くんの部屋にいるのが、夢みたいで」
上目遣いに彼を見つめ返すと、獄寺くんの瞳が大きく揺れた。
次の瞬間、思考が止まる。
不器用で、けれど驚くほど熱い彼の唇が、あたしの唇を塞いでいた。
「ん、っ……ごく、でらくん……っ」
「……あ……わりぃ。……止まんねーんだ。お前のこと、ずっと……こうしたいって思ってた」
一度触れ合った熱は、もう止まらない。
彼はあたしの背中に腕を回し、押し倒すようにベッドへ誘った。
絡める指先が震えている。
それが、彼もあたしと同じくらい緊張し、それ以上に愛してくれている証拠のようで、あたしの胸は締め付けられた。
「……嫌なら、今すぐ突き飛ばせ。
……じゃなきゃ、俺……お前を離さねーぞ」
「……離さないで。隼人くん」
名前で呼ぶと、彼は獣のような低い吐息を漏らし、あたしの首筋に顔を埋めた。
服を脱がせる手つきは、どこまでも丁寧で、壊れ物を扱うように慎重だ。
露わになった肌に、彼の熱い掌が触れる。
「綺麗だ。……今まで、これに触れるのが怖かった。……俺なんかが、お前を汚しちまうんじゃねーかって」
「汚くないよ……。隼人くんの熱、もっと頂戴」
重なり合った瞬間、あたしの世界は彼の色に染まった。
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