第2章 幻術師の甘い檻:カエル帽子の下の熱
翌朝。
ヴァリアー本部の重厚なリビングに、私はフランに半ば引きずられるようにしてやってきた。
昨夜の「朝まで寝かせない」という宣言は嘘ではなく、あたしの体はまだふわふわと浮いているような感覚で、首元には彼がこれ見よがしに刻んだ痕がいくつも残っている。
「……おはようございまーす。お腹空きましたよー、堕王子ー」
フランはいつもの抑揚のない声で、けれどあたしの腰をがっしりと抱き寄せたままソファーに深く腰掛けた。
「シシシッ! 1分遅えぞ、カエル。……って、なんだその顔は」
先にリビングでくつろいでいたベルフェゴールが、銀のナイフを指先で弄びながら二人を凝視した。
その目はすぐに、あたしの首元の「痕」と、フランのいつも以上に満足げな表情を捉える。
「……へぇ、やったな。お前、昨日は部屋から一歩も出てこなかったもんなぁ?」
「……何のことですかー。ミーはただ、とじっくり『幻術の特訓』をしてただけですよー。ねー?」
フランは悪びれもせず、あたしの肩に顎を乗せて、すり寄るように顔を近づけた。その瞳には、隠す気など微塵もない独占欲が宿っている。
「何が特訓だ、バカガエルがぁ!!」
奥からプロテインを片手に現れたルッスーリアが、あたしの姿を見るなり黄色い声を上げた。
「あらやだ! ちゃん、顔真っ赤じゃない! フランちゃん、あんた相当激しく可愛がったわね!? お姉さん、見てるだけでお腹いっぱいよぉ!」
「……っ、うるさいですよ、ルッス姐さん」
あたしが真っ赤になって俯くと、フランはさらに力を込めてあたしを引き寄せ、自分の腕の中に閉じ込めた。
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