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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第4章 ♾️


「待って、緑谷くん……止めて! 彼まで閉じ込められたら、私……!」


通信の向こう側で、は悲鳴のような声を上げた。
自分のせいで世界が狂い、何百万人もの意識が囚われた。
その地獄の中に、爆豪まで引きずり込むわけにはいかない。
だが、緑谷の返答は静かで、残酷なほどに断定的だった。


「……無理だよ。かっちゃんは、もう止まらない。君が一人で責められて、泣いているって知って、黙って見ていられる人じゃないから」


緑谷の言葉が、彼女の胸に鋭く突き刺さる。


「彼はね、君を守るためだけに……君の隣にいるためだけに、すべてを捨てて飛び込んだんだ」


申し訳なさと、やり場のない自責の念がを支配した。
自分のような存在のために、ヒーローとしての未来も、現実の体も危険に晒して。
けれど、それ以上に溢れ出したのは、孤独に凍えきった魂を溶かすような、彼の不器用で真っ直ぐな体温だった。


「……っ、わかった。行く、私……入江に行く……!」


エミリアを責める声が響く中で、彼女は震える手で転送コードを呼び出し、誰も知らない、二人だけの思い出の場所――入江へと向かった。

視界が白く反転し、次の瞬間、潮騒の音が耳に届く。
いつもの静かな波打ち際。
月の光だけが青白く照らすその場所に、人影があった。


「……遅ぇんだよ、クソ女」


聞き慣れた、不遜で、けれど誰よりも愛おしい声。
そこに立っていたのは、い焦燥を隠しきれない瞳で自分を睨みつける爆豪だった。


「BLAST……っ」


駆け寄ろうとした彼女の膝から力が抜ける。
崩れ落ちるよりも早く、爆風のような勢いで距離を詰めた彼の手が、その細い肩を、そして体を強く引き寄せた。


「……っ……」


爆豪は、折れそうなほど強く彼女を抱きしめた。
仮想世界のデータでしかないはずのその抱擁は、現実の何よりも熱く、そして確かだった。


「一人で勝手に終わらせてんじゃねぇぞ。……テメェが何歌おうが、世界がどうなろうが関係ねぇ。俺がここにいるっつってんだろ」



世界中が彼女を敵と呼んでも、この男だけは、地獄の底まで自分を肯定しに来てくれた。
は彼の胸に顔を埋め、声を上げて泣いた。


出口のない監獄と化したこの世界で、ようやく彼女は、自分が帰るべき場所を見つけ出していた。





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