• テキストサイズ

Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第4章 ♾️


八周年の祭典、前夜祭の当日。
『ZERO WORLD』の仮想空間内は、空を覆い尽くすデジタル花火と豪華な前夜祭の喧騒に沸き立っていた。
世界中のユーザーが、伝説の歌姫の復活を一目見ようと続々とダイブを開始している。
だが、現実の世界(リアル)は、それとは正反対の泥沼に沈んでいた。


「――東エリア、火災発生! 救助隊を回せ! 逃げ遅れた奴がいるぞ!」


「街で複数のヴィランが暴れてやがる! 誰か応援寄こしな!」


夕方から夜にかけて、堰を切ったように事件や事故が多発した。
示し合わせたようなタイミングの悪さだった。
爆豪は、現場から現場へと飛び回り、掌の爆炎を絶やすことなく振るい続けていた。


(……チッ、どいつもこいつも、今日に限って……!)


心臓の鼓動が激しく刻むリズムは、焦燥感に染まっている。
頭の片隅には招待されたVIP席の座標と、そこで自分を待っているはずの彼女の姿があった。

約束した。
一番近くで見ると、そう告げたはずだった。
だが、現実は残酷なまでに彼を縛り付ける。
倒しても現れるヴィラン、崩壊する建物、鳴り止まない救助要請。
ヒーローとして目の前の命を見捨てる選択肢など、彼には毛頭なかった。


時計の針が無情にも深夜を刻み、8月8日に日付が変わる。
祭典のメインイベント――#NAME4のライブが始まる時間だ。


「……クソがッ!」


路地裏のコンクリートを、爆豪は力任せに殴りつけた。
額から流れる汗が目に入り、視界が滲む。
通信機からは、依然として現場の混乱を伝える怒号が響いている。
結局、彼はダイブはおろか、モニター越しですら彼女の姿を追うことさえ叶わなかった。
自分の無力さと、あまりに「出来過ぎた」不運。
沸々と湧き上がる苛立ちの中で、爆豪は夜空を見上げた。




/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp