第1章 シンデレラ ―The Real Story―
「すいません。お恥ずかしいが、腹が減って、動けなくなりました」
まあ!
娘は声を上げると、ちょっとまっていて下さいませと声をかけ
慌てて走ってまいりました
少しして、バスケットにりんごとサンドイッチを入れて持ってきてくれたのです
「どうぞ、私の粗末な食べ物ですが。食べて元気をつけてくださいませ」
王子は娘の差し出した食事を取り、やっと人心地つきました
それから、自然と王子と娘は話をし始めたのです
王子は娘に、狩りの魅力や面白さについて語りました
他のどんなことにも心動かない王子でしたが
狩りだけは好きだったのです
娘はそんな王子の言葉に楽しそうに耳を傾けました
「私も、狩りをやってみたくなりましたわ。でも、私には弓は重すぎます
野いちごを取るくらいで我慢しましょう」
そう言って、草むらから野いちごを取り、王子に分けました
王子は、なんときれいな野いちごだろう
なんと美味しい野いちごだろうと深く思ったのでした
「ああ、いけない
家の仕事の途中でした
水を汲み、お母様やお姉様方の服を洗濯せねばなりません
狩人の方、楽しいお話をありがとう」
娘はニッコリと微笑んで
水桶を手に家に帰ってまいりました
王子は、王宮へ帰る道々
娘の笑顔を思い浮かべて、幸せな気持ちになっていました
そして時は過ぎ、
今日はとうとう舞踏会の日となりました
王子は使いの者をあの占い師を呼びに出しました
王の触れにより、舞踏会には近隣の国の王女はもちろんのこと、国中の若い女性が招待されたのです
王宮の広間は美しく飾り立てられ、多くの料理が用意されました
舞踏会は日が沈んでから始まるというのに、まだ日が高いうちから多くの着飾った女性たちが王宮の庭に押し寄せ、互いの衣装を見せあっていました
そんな景色を見ていても、王子の心が震えることはありませんでした
宝石のようにきらびやかな王妃、花のように美しい娘達を見ても
王子は何一つ感じることはないのでした
例の占い師は、黒いフードを目深にかぶった姿で、
その美しい姫君たちの間を供の者につれられて、
ゆっくりゆっくり歩いてきました
「王子よ」
王子の間に通されると、占い師は王子に声をかけました