かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第1章 かぐや姫は好きな人に自力で会いに行く!!
「……おはよう、銀」
鈴の鳴るような声で自分の名を呼ばれた瞬間、銀時は言いようのない胸の疼きを覚えた。
会ったばかりのはずなのに。
知らないはずの女なのに。
その切ない微笑みに、どうしてこれほどまでに胸が締め付けられるのか、銀時にはまだ分からなかった。
壁に背中を打ちつけた衝撃で、ようやく銀時の脳が回転を始めた。
唇に残る、微かな熱。
そして、聞き覚えのないはずなのに、鼓膜の奥でひどく懐かしく共鳴する自分の名前。
「……ちょっ、待て待て待て。今、俺の名前呼んだか? なんでアンタ、俺のこと知ってんの? てか今の何? 朝の挨拶にしては刺激が強すぎて、心臓止まるかと思ったんだけど!?」
銀時は乱れた銀髪を掻きむしりながら、必死に動揺を抑えようと捲し立てた。
目の前のは取り乱す様子もなく、ただ静かに、射抜くような黄金の瞳で彼を見つめ返している。
「……アンタ、誰だよ。どこから来た。俺は……アンタなんて、見覚えねーぞ」
低く、けれどどこか震える声で銀時が問うた。
その言葉が放たれた瞬間、彼女の瞳が悲しげに揺れた。
「……、と申します」
彼女の唇から名が紡がれた。
銀時はその響きを舌の上で転がしてみるが、やはり記憶の糸は繋がらない。
それなのに、胸の奥が締め付けられるような、鋭い痛みが走る。
「……ねェ。で、そんな綺麗な姉ちゃんが、わざわざ光の中から降臨してまで、こんな薄汚ねェ万事屋に何の用だ? 何が目的だよ」
銀時はわざと突き放すような、ぶっきらぼうな口調で尋ねた。
これ以上、彼女の不思議な空気に呑み込まれないように。
だが、返ってきた答えは、銀時の予想を遥かに超えて真っ直ぐなものだった。