かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第1章 かぐや姫は好きな人に自力で会いに行く!!
静まり返った万事屋の居間。
銀時は枕元に座り込んだまま、いつの間にか深い眠りに落ちていた。
酒の熱と、隣で眠る彼女から漂う、どこか懐かしく清らかな香りにあてられたのかもしれない。
夜が白み始め、薄青い光が部屋に差し込む。
先に意識を浮上させたのは、だった。
は重い瞼を持ち上げ、ゆっくりと上体を起こした。
見知らぬ天井、使い古された家具。
混乱が頭をかすめるよりも早く、視界の端に映る男の姿に心臓が震えた。
すぐ隣で、銀髪を乱した男が器用に座ったまま寝息を立てている。
「……あ……」
声にならぬ吐息がこぼれた。
夢にまで見た、いや、夢の中でさえ手が届かなかった背中。
幾千の夜を越え、魂に刻みつけて探し続けてきたその面影が、今、手の届く距離にある。
の瞳に涙が滲んだ。
彼女は壊れ物に触れるような手つきで、銀時の両頬にそっと手を添える。
確かな肌の温もり。
それが現実であることを確かめるように指先を震わせると、彼女は吸い寄せられるように顔を近づけた。
「……やっと、見つけた……銀…」
祈りにも似た呟きと共に、重なる唇。
それは、触れるか触れないかの、淡く、けれど狂おしいほど切実な口付けだった。
唇に触れた柔らかな温もり。
銀時の意識は、深い沼の底から急浮上するように引き戻された。
「……ん……っ?」
微かに目を開けた瞬間、視界を埋め尽くしていたのは、あの黄金の瞳だった。
至近距離で交わる吐息。
そして、自分の頬を包み込む、ひやりとしていながらも熱を帯びた彼女の手。
「……え、……あ、…………は!?」
脳が状況を理解するより先に、銀時は心臓が口から飛び出しそうな勢いで、畳を蹴って後ろへと飛び退く。
「おわぁぁぁ!!? な、ななな、何!? 何してんのアンタ!? 俺、今なんかされた!? 唇に未確認飛行物体が着陸したよね今!?」
背中が壁にぶつかるまで一気に距離を取った銀時は、肩を上下させながら絶句した。
信じられないものを見る目で彼女を見る。
そこには、布団の上に端然と座り、少しだけ寂しげに、けれど慈しむような眼差しで自分を見つめるがいた。
黄金の瞳は朝日に透け、まるで遠い過去の約束を思い出させようとするかのように、静かに揺れている。