かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第4章 彼はかぐや姫を取り戻したい!!
からは、あの浮世離れした白銀の輝きは消えていたが、月人の加護を失い「人」として呼吸を始めた彼女の頬は、かつてないほど柔らかな赤みを帯び、その瞳には命の灯火が力強く宿っている。
それは、一千年前のどんな美しい伝承よりも、今の銀時にとっては眩しいものだった。
数日後、万事屋の居間では季節外れの熱気が渦巻いていた。
ちゃぶ台の真ん中に鎮座するのは、湯気を噴き上げる巨大な土鍋。
「……銀さん、一応言っておきますけど、今外は初夏ですよ。何なんですか、このサウナ状態は」
新八がメガネを曇らせながら、汗だくでツッコミを入れる。
「うるせーな、鍋に季節もクソもあるか。食いたい時が鍋の旬なんだよ。……ほら、これがお前が千年前に『食いたい』って言ってた、地上の究極のご馳走『鍋』だ」
銀時がドヤ顔で蓋を開けると、出汁の香りが一気に広がった。
は、ぱあっと顔を輝かせ、湯気の向こうにある光景を凝視している。
「……これが、お鍋……。皆さんで一つの火を囲んで、同じものをいただく……。あぁ、なんて温かいんでしょう」
「感心してる暇はないヨ! 、この世界は弱肉強食アル。モタモタしてると、銀ちゃんの汚い箸に肉を全部持っていかれるネ!」
「誰が汚い箸だ! 、神楽の言うことは聞かなくていい。一番高い肉は、一千年待ったご褒美に全部お前の皿に……あぁっ! お妙! 何しれっと高級肉をサルベージしてんだ!!」
「あら、早い者勝ちでしょう? さん、どうぞ、私の卵焼きも召し上がれ」
「姉上、それは毒です。さん、こっちの白菜をどうぞ」
カチャカチャと箸がぶつかり合い、怒号と笑い声が狭い居間に響き渡る。
はおそるおそる、銀時が取り分けてくれた肉を口に運んだ。
「……っ。……美味しい。美味しいです、銀さん……!」
じゅわりと広がる肉の旨みと、少し濃いめの出汁の味。
それは、一千年の間冷たい宮殿で「祈り」だけを糧にしていた彼女にとって、衝撃的なほど「生」を実感させる味だった。