かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第3章 彼はかぐや姫に幸せになってほしかった
一千年前、地上へ降り立ったを待っていたのは、銀が語った「自由」という名の、あまりにも孤独な日々だった。
彼女の比類なき美しさは、瞬く間に地上を騒がせた。
帝から名だたる貴族まで、連日のように男たちが訪れ、財宝や甘い言葉を積み上げては求婚を迫る。
けれど、の心はあの銀色の砂漠に置き去りにされたままだった。
「……銀。地上は、貴方が言った通り……とても色が鮮やかです」
春になり、銀が教えてくれた「桜」が咲き誇る。
淡いピンクの花弁が舞い散る下で、は独り、空を見上げた。
「でも、貴方がいないと、この色はどこか哀しい。……ねぇ、いつになったら迎えに来てくれるのですか?」
何も出来ず、不器用に過ごした日々。
銀がいれば笑い飛ばしてくれただろう失敗も、今はただ、静かな涙に変わるだけ。
季節が過ぎ、一年が過ぎてもあの銀色の髪の男は現れなかった。
ある桜の散る夜。
男たちの執拗な求婚に疲れ果て、銀への想いが溢れ出したは無意識にある旋律を口ずさんだ。
それは、月の宮殿で祈りを捧げる際に歌われる「月の歌」
地上では決して響いてはならない、天と地を繋ぐ禁忌の調べ。
彼女の切ない歌声が、夜風に乗って天へと吸い込まれていく。
その瞬間、夜空に浮かぶ月が不自然に輝きを増した。
彼女の居場所を特定できずにいた月の使者たちが、その「祈り」の波紋を捉えてしまったのだ。
「……見つけたぞ。裏切り者の供に逃がされた、迷い子の姫を」
雲を割り、白銀の光と共に使者たちが舞い降りる。
は驚き、逃げようとしたが彼らの力は絶対だった。
「嫌……! まだ、あの方を待っているのです。彼は、必ず迎えにくると言ってくれた!」
「……愚かな。あの男はとっくに処刑され、魂すら残ってはいない。貴様が待っているのは、存在しない幻だ」
「嘘……そんな、嘘よ……っ!!」
悲しみに暮れるの肩に無慈悲に羽衣が掛けられた。
愛した人の死を突きつけられ、心に深い傷を負ったまま、彼女は強引に月へと引き戻されたのだったーー。