かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第1章 かぐや姫は好きな人に自力で会いに行く!!
「……いいのかよ。あんな高そうな布、あの変態将軍に貸しちゃって」
女装を解き、いつもの着流しに戻った銀時がに声をかけた。
は月を見上げ、穏やかな、けれどどこか寂しげな笑みを浮かべている。
「いいんです、銀さん。彼もまた、籠の中の鳥のようなお方。……あの方にひとときの『自由』の記憶が残れば、それで」
江戸城へと戻る直前、茂茂が大切そうに抱えていた薄衣をへと差し出した。
「殿……世話になった。この衣の主の如き温もり、生涯忘れぬ。……受け取ってくれ」
しかし、は首を横に振り、黄金の瞳を和らげた。
「いいえ、将軍様。それは、そのまま貴方様が持っていてください。……いつか、心が折れそうになった時、その衣を眺めて、自由な夜があったことを思い出していただければ」
「……左様か。忝い。……それにしても、この衣は不思議だ。手に取れば驚くほど軽く、月光を織り上げたような輝きがある。まるで……伝承にある『かぐや姫の羽衣』のように美しいな」
その言葉を聞いた瞬間、の肩がびくりと跳ねた。
瞳が大きく見開かれ、吸い込まれそうな光を放つ。
「……将軍様。今、なんと仰いましたか? ……『かぐや姫』……その名を、ご存知なのですか?」
「……? ああ、この国では子供でも知っている有名な伝承だ。竹の中から見つかった麗しき姫が、最後には月へと帰るという……」
の顔から、さぁっと血の気が引いていく。
その様子を銀時が鋭い目で見守っていた。
万事屋に戻ってからも、の様子はどこかおかしかった。
窓際で月を眺めては、溜息を漏らす。
銀時はソファにふんぞり返りながら、彼女に声をかけた。
「……おい。さっきから月と見つめ合って何してんの。月に愛の告白でもしてんのか?」
「……銀さん。あの、一つお聞きしてもよろしいですか?」
は銀時の隣に歩み寄り座ると、不安げにその袖を掴んだ。
「……『かぐや姫』とは、どのようなお話なのですか? ……」
「あァ? なんだ、そんなことかよ。ここじゃ定番の昔話だぞ」
銀時は頭を掻きながら面倒くさそうに、けれど一つずつ言葉を選んで話し始めた。