かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第1章 かぐや姫は好きな人に自力で会いに行く!!
万事屋の日常に、が加わってから、数日が過ぎた。
当初、が着ていたあの豪奢なドレスのような着物では、歌舞伎町の雑踏ではあまりに目を引きすぎたし、何より日常生活には不向きだった為、お登勢や妙お古を譲って貰い着ている。
慣れない手つきで着付けたそれらは、どれも庶民的なものだったが、が袖を通すと、まるで高級な絹織物であるかのように上品に見えるから不思議なものだった。
当初は「戦力増強ネ!」と喜んでいた神楽や、「少しは家の中が綺麗になるかも」と期待していた新八だったが、その幻想は初日の朝に脆くも崩れ去った。
「……あの、さん。これは何ですか?」
「銀さんが『米を研げ』と仰ったので、精一杯、磨き上げました」
新八が震える指で差した先には、一粒一粒が真珠のように輝きすぎて、もはや原型を留めていない「米だったもの」が鎮座していた。
他にも掃除や家事を頼むが何一つできない。
「……おい、新八。これ、マジでどっかの国の姫様なんじゃねーの? 浮世離れにも程があんだろ」
「銀さん、僕もそう思います。家事の概念が、僕らの知ってるそれとは根本的に違う気がします……」
銀時が呆れ顔で頭を掻くと、は居たたまれなさそうに瞳を伏せ、指先をぎゅっと握りしめた。
「申し訳、ありません。私……このようなことをした経験がなくて……」
どこから来たのか、何をしてきたのか。
尋ねても彼女は寂しげに微笑むだけで決して口にしない。
けれど、その真っ白な手を見れば、彼女がこれまでどれほど過保護に、あるいは孤独に、俗世から切り離されて生きてきたかは想像に難くなかった。
「たく……しょうがねーな。見てろ、雑巾がけってのはこうやるんだよ。腰入れろ、腰を」
文句を言いながらも、銀時は隣に膝をつき、一つずつ手本を見せ始めた。
は食い入るようにその背中を見つめ、「はい、銀さん」と、慣れない呼称を大切そうに口にする。
銀時が彼女の記憶の中にいないのであれば、せめて新しい自分を刻み込もうとするかのように。