第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
「……ふざけんな」
腕の中で低い声が触れる。怒鳴ってるわけでもないのに圧だけがある。
「戻る保証ねぇだろ」
「でも……」
「テメェの〝多分〟は信用できねぇ。一緒にいたくないってのも、テメェの意思か、それとも向こうの影響か分かってねぇだろ」
「……うん」
「だったら尚更一人にできるかよ。まず、〝原因〟を潰す」
「原因?」
「向こうの欲求が流れ込んでるなら、その欲求を満たせば消える可能性がある」
その声はずっと冷静だった。甘い空気の中で始まっていく行為ではなく、あくまで第三者の流れ込んできた欲を満たすだけのものだから。身体の熱はそのままなのに、頭の中だけはやけに冷静で、拒絶にも似た感情が込み上げてくる。
「嫌…」
「は?」
「解除条件がそれでも……、抱かれたくない」
勝己の眉がぴくりと反応した。こんな風に拒否なんてしようものなら、すぐに怒号が飛んでくる。じっと見つめた後、小さく息を吐く。
「……俺だから、嫌なンかよ」
「そういうんのじゃない」
「じゃあなんだよ。理由があンなら言え」
「うまく、言葉にできない」
「思ったこと言えや。考えとることがあンだろが…」
静かな空間に沈黙が落ちた。その間にも湧き上がる感情は冷たく尖っていく。
「今、勝己に抱かれても、いつもみたいに素直になれない。受け入れたくもない。……勝己に、優しくしたくない」
勝己は視線を落としたまま、黙って私の言葉を受け入れる。どこか悲しそうに見える顔を……。
「…むしろ、虐めたいの」
吐き出した言葉に自分が一番驚きながらも、どこか腑に落ちていた。
「は…?」
顔をあげた勝己は、視線を逸らし舌打ちをする。
「凪らしくねぇな」
「でも、そう思うの」
「クソ厄介なもん拾いやがって」
「そんな面倒なら帰れば?…別に私は困らないし」
吐き捨てるように言った。
本当ならこんなこと思わない。勝己が心配してくれていることも分かっている。だけど湧き上がる冷たい感情が、それを全部押し流していく。