彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第6章 番外編 七海は彼女を愛したい
2月14日のバレンタイン。
高専の廊下はどこか浮き足立った空気が漂っていた。
「よっ、! 待ってましたぁ! 今年も例の『アレ』、あるんだよね? ね?」
廊下の角を曲がった瞬間、長身の白髪が視界を塞いだ。
五条である。
彼は確信犯的な笑みを浮かべ、これでもかと手を差し出してきた。
「おはようございます、五条さん。はい、これ。……毎年言ってますけど、あくまで『義理』ですからね。お返し、期待してますよ」
「わかってるって! でもの手作り、そこらの高級店より全然美味いんだもん。伊地知と硝子の分もちゃんとある? 預かろうか?」
「結構です。自分で配りますから」
五条は受け取った小箱を指先でくるくると回しながら、「やったね♡」と子供のように声を弾ませた。
その直後、五条は校舎の階段で任務に向かおうとする七海を捕まえた。
五条の口元には、いかにも「今から君を煽ります」と言わんばかりの邪悪な笑みが浮かんでいる。
「あーっ! ナナミン、ナナミン! 見てよこれ、ジャジャーン!」
五条はわざとらしく、七海の顔のすぐ横でリボンのかかった箱を振ってみせた。
カチャカチャと中のチョコが当たる音が、静かな廊下に響く。
「……五条さん、近いです。邪魔です。どいてください」
「つれないなぁ! これさ、からのバレンタインなんだよねぇ♡しかもこれ、彼女の『手作り』なんだよ♡ 知ってた?」
七海は歩みを止めず冷ややかな視線だけを向けたが、五条は長い脚を活かしてひょいひょいと横をついてくる。
「聞いてよナナミン。のチョコ、繊細で甘さ控えめで、素材の味が活きてて、もうマ・ジ・で絶品なわけ♡あー、早く食べたいなぁ♡あの子、朝から僕のところに来て『五条さん、いつもお世話になってるので♡』なーんて言っちゃってさぁ! 罪な女だよねぇ♡」
わざとらしく箱に頬ずりせんばかりの勢いで自慢する五条に、七海の眉間の皺が一段と深くなる。