彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第4章 彼女は七海の幸せを心から願っていた
沈黙が流れた。
やがて、侑子さんは満足げに、この日一番の艶然とした微笑みを浮かべた。
「……面白いわ。自らの存在意義である『呪い』を捨て、その空いた器に『生』を詰め込もうというのね。……いいわ。その願い、等価として受理しましょう」
侑子さんが大きく袖を翻すと、満月の光が荒れ狂う渦となって私を飲み込んだ。
「寿命、知識、そして三人の呪力……。すべて、対価として預かったわ。……さあ、お行きなさい。もう二度と、私の店に来る必要のない、ただの幸福な人間としてね」
光の中で、意識がほどけていく。
前世の記憶が、指の間からこぼれ落ちる砂のように消えていく。
建人さんが死ぬという『物語』も、私が転生者であるという『事実』も、すべてが白く塗り潰されていく。
けれど、最後に一つだけ。
「彼を助ける」という魂に刻まれた本能だけを道標に、私は血と焦燥が渦巻く、あの渋谷の地下へと、真っ逆さまに堕ちていったーー。