彼女は七海に幸せになってほしい 【呪術廻戦 七海 R18】
第4章 彼女は七海の幸せを心から願っていた
渋谷の喧騒は消え、残ったのは耳鳴りのような静寂と、指の間からこぼれ落ちた砂のような喪失感だけだった。
七海建人が死んだ。
その事実は、私の胸にぽっかりと、取り返しのつかない穴を開けていた。
葬儀の後の数日間、私はどうやって息をしていたのかも覚えていない。
ただ、夜が来るたびに祈った。
もしも、もしも彼が報われる世界があるのなら、己の全てでも差し出すのに、と。
その夜、私は夢を見ていた。
立ち込める紫煙の向こうに、見覚えのあるミステリアスな『店』が現れる。
「いらっしゃい。……ようやく、思い出すトキが来たようね」
長いキセルを指に挟み、艶然と微笑む女性。
ーー『壱原侑子』がそこにいた。
「……あ」
その姿を見た瞬間、堰を切ったように『わたし』の記憶が流れ込んできた。
私は、この世界の人間ではなかったーー。