第4章 【日車】有限の閃き
「」
日車は視線を脹相に向けたままの名を呼ぶ。
不意に名前を呼ばれたは驚いように日車の横顔を見た。
「今日は『らしくない』ことをする日だ」
はハッとした。
「まだ今日は終わってない。わかるだろう?」
「…何を言っているんだ?」
脹相だけが理解出来ていない。
は日車が何を言っているのかもう検討がついていた。
は震える手で持っていたぬいぐるみを自分の胸元にギュッと抱きしめた。
少しだけ呼吸を整えてから「…脹相」と話かけた。
「は黙っ」
「脹相!」
らしからぬ大きな声に思わず脹相は日車から視線を外しを見た。
と目が合う。
自分を奮い立たせる意志が瞳にこもっている。
「日車さんは悪くない!私が…私が帰りたくないって言ったの!だから、私のことは私に怒って!私から…私の話を聞いて欲しい!」
言い終わるとは肩で息をしていた。
脹相からはさっきまで立ち昇っていた怒りはすっかり消え、呆気にとられた顔をしている。
「と言うことだが、どうする?俺と話すか?」
「……いや、から話を聞く…」
「そうか」
脹相は日車の胸倉を離すと「…すまない」と目も合わせずに小さく言った。
「それから…が世話になったな…」
そう言うと背を向けた。
(まだ兄、か…)
脹相はに先に中に入っている旨を伝えて、寮の中に入っていった。
それを見送るとは日車に向き直った。
「…日車さん、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げる。
「なかなか、らしくなかったぞ」
表情を緩めてそう言えば、の表情も柔らかくなった。