第4章 【日車】有限の閃き
がどんな顔をして帰ってくるか気になった日車は車に乗らずにいた。
(随分遅いな…)
が入店してからしばらく時間が経っている。
ゴミ捨てだけなら1分とかからない。
手洗いかもしれないが、そうであるなら声をかけるだろう。
車に体重を預けて思案する。
店内に目を向けると丁度がレジに並ぶところが見えた。
何か買い物をしているらしい。
レジの店員と少し会話をしている。
嬉しそうに笑っている。
それを見ているだけで何故だか満たされる。
店内から出てきたはパンパンに膨らんだレジ袋を持っていた。
日車が車に乗らずに待っていたのに少し驚いた様子で、小走りで帰ってくる。
「お待たせしてすみませんでした。もう車に乗っているものだと思っていて」
もう顔は赤くない。
ただ、耳の辺りに少しだけ赤みが残っている。
それにも僅かに満足する。
「何か買い忘れたのか?」
助手席のドアを開けてやる。
「ありがとうございます」とは素直に乗り込んだ。
日車が運転席に乗り込むと、が「これ、どうぞ」と持っていたレジ袋を差し出してきた。
「もうすぐ高専なので…これ、帰りの車の中で、と思って」
「あぁ、そうか」
レジ袋を受け取る。
受け取る際に日車の手がの手を掠める。
その瞬間、がパッと手を引っ込めた。
「あ…すみません」
目は少し泳いでいる。
(……これは…)
引っかかりつつも袋の中を見る。
中にはブラックコーヒーが数本、ミントガム、酸っぱいグミ、高カカオチョコレート、スルメ…などなど、様々なラインナップである。
「これは帰りの車で消費できる量じゃないな」
「え、でも、日車さんの家って岩手県ですよね?」
「……」
しばらく無言でと見つめ合う。
そして。
「フッ…」
思わず吹き出してしまった。
「…今は、高専が、用意した、部屋に、住んでる…東京だ」
笑いを堪えながら簡潔に答える。
込み上げる波をやり過ごし咳払いをする。
「わー、てっきり岩手からだとばかり…」
「俺が毎回岩手から来ているわけがないだろう」
「ですよね」
いつもの調子に立て直す。
そしてエンジンをかけて、発車させた。
もうすぐ高専。
今日という日の終わりに向かって発進する。