第4章 【日車】有限の閃き
は少しだけ目を伏せる。
「お前は誰かに裁かれたい訳じゃない。ただ自分が――神になるのが怖いんだろう?」
はハッと目を見開いた。
人間ならざる者を神と言い換えたのは日車の優しさだろう。
「…安心しろ、お前は人間だよ。やりたいことをやりたいと言って、欲しい物を欲しいと言う。今日のお前は立派な人間だった」
そこまで言うとはようやく呼吸を再開させたように大きく深く息を吸った。
「でも、人間はやりたいようにやっていたら自覚があろうがなかろうがいつか他の人を傷つけますよ?」
「そういう時のために法律がある。その時は俺が弁護してやる」
が意外そうにポカンとした。
そして、少しだけ笑った。
「…それは、心強いですね」
それを見て、日車は(…これは人間モードだな)と少しだけ表情を和らげた。
そして、二人はまた夕焼けに向かう。
未だに沈黙は柔らかい。
もうすぐ日が沈む。
太陽が地に足つけてからの2分間。
それまでよりも一瞬に感じた。
(…帰りたくない。いや――帰したくない)
そんなことを思って息をつく。
(そんな駄々は、らしくない…)
「帰るか」
柵から離れて今まで見ていた景色に背中を向ける。
も後を付いてくるだろう。
そう思っていた。
数歩踏み出してもが付いてきている気配がしない。
日車は振り返った。
は先程の場所に佇んでいた。
「どうした?」
「日車さん…」
もう日は沈んで薄暗く、の表情は見えない。
「私…まだ、帰りたくありません」
声だけで不安そうなのがわかる。
きっと、もっと欲しがってもいいのだろうかと戸惑っている。
だから日車は鼻で笑ってこう言った。
「欲深いな」
それにつられても笑った。
「…だって、人間ですから!」
「まぁ、夕飯もとらずに帰したらアイツが何を言うかわからないからな…何か食べてから帰るか」
「私、パスタが食べたいです!」
「車に乗ったら店を探すか」
「私も一緒に選びます!」
二人の会話は生まれたての夜空に溶けていった。