第1章 【脹相】新月
その後の脹相はソワソワと落ち着かない様子だったが、任務はしっかりこなして予定よりも早く終わった。
「脹相、今日キレッキレだったなー。あ、ここらへんで美味いもん食べて帰んない?」
伸びをしながら虎杖が言う。
いつもの脹相なら喜んで付き合うはずだが、その日の脹相は違った。
「すまない悠仁、今日は先に帰る。悠仁は伊知地と美味いものを食べてくれ」
「ちょ、どうやって帰んの?」
「赤鱗躍動を使えばどうってことはない」
「いやいや、一般人に見られたら通報されるから!わかった!皆でまっすぐ帰ろ!」
車で帰っている間も脹相は腕を組み貧乏揺すりまでしていた。
「そういえば脹相、さんと繋がった?」
脹相の様子を見れば一目瞭然なのだが、虎杖はとりあえず話題として振っておいた。
「…いや」
「ここ、電波悪いんかね?」
「…〝繋がり〟に電波は関係ない」
本人は気づいてないかもしれないが脹相の眉間には深く皺が寄っている。
「さんのこと、心配?」
脹相はハッとした。
「…すまない、俺は悠仁のお兄ちゃんなのに」
さっきまで眉間に皺を寄せていたはずなのに一瞬で眉が下がった辺り、まだまだ自分にも気持ちがあるのだと感じた虎杖の何となく嬉しさがあり、照れくささもあった。
「いいよ、俺はもう十分支えてもらったから」
「…そうか。でも、何かあったら頼ってくれ」
「はいはい。とりあえず帰ったら報告は俺やっとくから、脹相はさんのところに行けよ」
「あぁ、悪いな、悠仁」
そう言って脹相は再び何かを考えるように黙り込んだ。