第1章 【脹相】新月
〝繋がり〟で話しかければ聞こえないということがないので、基本的にはすぐ返事が来る。
なのに、からの返事が来ない。
こんな事は〝繋がり〟を結んでから初めてのことであった。
常に感じている気配も今は感じられないことに気づいた。
〝?〟
呼びかけてもやはり返事はない。
一瞬で血の気が引くのを感じた。
「悠仁…今すぐ高専にいる奴に連絡は取れないか?」
「ん?どったん?」
「…から返事が来ない。気配も感じない」
その言葉に虎杖も表情が険しくなった。
「わかった、新田さんに訊いてみる…」
虎杖はすぐにスマホを取り出すと高専へと電話をかけた。
事情を話しての所在を確認してもらう。
スピーカーにもしていないのに電話の保留音がやけに大きく、そして長いこと聞いている感覚に陥る。
脹相は逸る気持ちを落ち着かせようと口元を両手で覆う。
不意に保留音が切れた。
「…はい。…はい。…いや、それは大丈夫。…わかった」
話をしている虎杖の表情からはの安否は掴めない。
通話を切った虎杖は険しい表情のまま脹相を見る。
「脹相、落ち着いて聞いてほしいんだけど…」
「あぁ」
「…さん…」
「…」
「普通に高専で仕事してるってー」
「!?」
完全に由々しき事態を想像していた脹相は言葉も出なかった。
「脹相、なんつー顔してんだよ。よかったじゃん、さん無事で」
「だったら、さっきの悠仁の顔はなんだ?」
「ちょっとからかっただけー」
脹相は少し不機嫌そうな顔をして窓の外に視線を移した。
(どうして〝繋がり〟が繋がらないんだ?)
からは〝繋がり〟はどちらかが意図して断たない限りは繋がっているものだと説明されていた。
新宿決戦の時には脹相からそれを断ったが、その後再び〝繋がり〟を結んだ。
むしろ、その後の方が〝繋がり〟が強くなっているように感じている。
(もう俺から〝繋がり〟を断つことはない。から断たれたのか?)
そんな結論に達して脹相は目に見えて打ちひしがれていた。