第4章 【日車】有限の閃き
「一度、車に戻るか」
ゲームセンターを出ると日車が提案した。
何をするにも抱えるほど大きなぬいぐるみをそれぞれが持ってては荷物になると判断した結果だ。
も快諾して、もと来た道を戻り始める。
まだゲームセンターでの高揚が残っているのかの足取りは軽やかである。
「あ!」
次のミッション発生の合図。
が前方を指差した。
少し先に横断歩道がある。
歩行者信号は今青に変わった。
距離的に今の青は見送って、次のターンで渡るのが合理的である。
が。
「あの青信号で渡しましょう!」
がいきなり走り出した。
「な、」
日車は突然のことに目を見開いたが、このまま見送るわけにはいかない。
遅れて走り出した。
横断歩道に着く頃には追いついたが、歩行者信号は点滅している。
ここは腹を括るしかない。
の手を取り、そのまま走る。
赤信号になるのと同時くらいには渡り終えた。
「…青点滅で横断歩道に進入する行為は道路交通法違反だ」
「ギリギリ、セーフ、です」
は肩で息をしているが表情は達成感で満たされている。
手はまだ繋がれている。
(…温かい)
少しだけ繋いだ手に力が入る。
それに気づいて、すぐ離す。
は離されて初めて手を繋いでいたことに気づいたようで「間に合ったのは日車さんのおかげですね」と無邪気に笑った。
「2度目はないからな」
「はーい」
子どものような返事を聞いて、再び歩き出す。
「日車さんの手って少し冷たいんですね。冷え性ですか?」
「…今は交感神経優位だからだ」
「驚かせてすみませんでした」
言葉の割に表情は朗らか。
前を向いて鼻歌まじり。
手にはまだ温もりが残っている。
それを確かめるように視線を下げた。
(…これは…やはり…か)
前々から気づいていた。
見ないふりをしていただけだ。
この速い脈拍は走ったせいだけでは、ない。
表に出してはいけない、悟られてはいけない、感情。