第4章 【日車】有限の閃き
レーシングゲームの座席に座った日車は難易度設定やコース設定を手早くする。
は座席に座り、ハンドルを触り、アクセルとブレーキをカチャカチャ踏んでいる。
「…ハンドルは、進む方向…アクセルで、発進…ブレーキで、止まる…ん?アクセル?どっち?…このレバー、何??」
最低限の知識はあるが目の前のものと一致せず少しパニックになっている様子。
「奥がアクセルだ。右足で軽く踏むとゆっくり進む。このレバーは使わなくていい。とりあえずゆっくりでいい。コースに沿って走る。今日はそれだけでいい」
簡潔に説明する。
そして「自動車の運転は法令順守だが…」と口にする。
「これはゲームだからな」
ほどなくして、スタートの火蓋が切られる。
日車はスタートの数秒前にアクセルを踏み込む。
エンジン音が唸り、画面の中の車体が一気に加速しスタートダッシュを成功させた。
コーナーで減速もなく、ラインを綺麗にトレースする。
もちろん接触もなく、無駄もない。
見事なレーシング。
だが、隣のはそれどころじゃない。
「わ、わー!あれ?前に進めないです!」
開始数秒で壁に激突していた。
終いには逆走をし始める始末。
もちろんビリで、予選で散った。
そんな訳で、は日車のみ参戦の決勝を隣で観戦する。
決勝も予選同様に他を寄せ付けないテクニックであっという間にトップでゴールした。
「日車さん!おめでとうございます!」
拍手喝采で祝福してくれる。
「何度も言うが、これはゲームだ。しかし、ゲームとはいえ危険運転のゲートウェイになりかねないものは感心はしないな」
冷静に返すが、内心悪い気はしていない。
表情はどこか誇らしげだ。
「こっちはどうですか?」
今度は隣にあったバイクのレーシングゲームを指差している。
「そっちはやったことがないな」
「え?本当ですか?」
の表情が一段明るくなる。
これなら日車と勝負になるとでも思っているようだ。
「ただ、俺は普通二輪免許も持っている」
「えー」
「昔、盗んだバイクで走り出すのに憧れてたんだ」
「それって…」
「あぁ、普通に窃盗罪だ。もちろん実行に移したことはない」