第4章 【日車】有限の閃き
日車の言葉に従い、今日は遅くなること、帰るまで連絡しないことだけ伝えたようだ。
そして改めて写真撮影に臨む。
「写真撮る前にちょっと食べちゃったのが惜しいですね」
「こっち側から撮れば食べたところは写らないんじゃないか?」
二人が試行錯誤しながら撮った写真はピンボケはしてるし、お互いが写り込んでいるしで『映え』とは程遠いものだった。
「SNSには載せるなよ。肖像権の侵害になるからな」
「私は観る専門なので大丈夫です」
そうしてようやくゆっくりパンケーキを食べることができる。
日車はに食べさせて余ったら食べればいいぐらいの気持ちだったのだが、は始めから取り皿に分けてくれた。
「上手に取り分けるな」
そこは素直に感心した。
「ただの年の功ですよ」
伏し目がちになされる謙遜に重みを感じる。
そうでなくてもの所作は1つ1つが洗練されていて無駄がない。
美しい。
いつまでも見ていられる。
こんなにフワフワでプルプルのパンケーキも難なく食べる。
難なく食べているはずなのだが、口元にクリームはついてしまうらしい。
「、クリームがついているぞ」
「?」
「ここだ」
日車はクリームがついている場所を自分の顔で指し示して教えたのだが。
「…ふ、ふふ、あはは」
突然、が笑い出した。
「?」
何で笑っているかわからない日車を尻目に一頻り笑ったは紙ナプキンを差し出した。
「日車さんもそこにクリームがついてますよ」
に教えるために指差したまさにその場所に自分もクリームをつけていたのだった。
日車は「そうか」とだけ言って紙ナプキンを受け取ると何事もなかったように拭き取った。
耳が少し熱くなったが、が声を出して笑えたのなら安いものだと感じた。
そんなこんなでパンケーキも食べ終わり、そろそろ出ようかと言う時。
「ちょっと待ってください!」
日車は当たり前のように会計を済ませようとしているとからストップがかかった。
「どうした?忘れ物か?」
「私も払います!」
手には財布が握られている。
それを何秒か見つめたが、無視して店員に「これで」とクレジットカードで支払いを済ませ、さっさと店内から出ていった。