第4章 【日車】有限の閃き
しばらくすると注文したパンケーキが届いた。
それを目の前にしたが一言。
「これは何日分ですか?」
その一言が物語るように皿からはみ出るほどトッピングの乗ったパンケーキはもはや一塊の山のようだった。
「これは今ここで食べきる用だ。しかも賞味期限は10分らしい」
「日車さん、もう1分は経ってます!」
「1秒ごとに味が落ちるぞ。早く食べた方がいい」
フォークを差し出すとは慌てて受け取り、パンケーキに突き立ててから一口食べた。
その瞬間、の目が少し開く。
瞳は輝いて見える。
「どうだ?」
「甘くて美味しいです!」
「語彙力に乏しいな」
「んー、じゃあ、日車さんも食べて見てくださいよ」
パンケーキが乗ったフォークを向けられる。
もちろんが現在使用中のものだ。
(これがどうゆうことなのかわかってないんだろうな)
日車が口を開くとフォークが上手に滑り込んできた。
「どうですか?」
「ん、甘いな」
「日車さんの語彙力も同じようなものじゃないですか」
が笑う。
正直、味なんてわからない。
ただこの一口だけは特別甘いことだけはわかった。
お互い一番美味しい一口を食べたところで、の表情が神妙になる。
「日車さん?」
「なんだ?」
「ここのパンケーキは賞味期限が10分だというのに、みんな食べないで写真を撮っているのですが…」
「あぁ、むしろそっちが目的だったりするからな」
「賞味期限10分なのに…」
はよほど『賞味期限10分』のワードが気に入っているらしい。
「まぁ、消費期限ではないからな。俺たちも撮ってみるか?」
「はい!」
はスマホを取り出し、指を彷徨わせながら操作している。
取り扱いにはまだ慣れてないらしい。
「どれ、見せてみろ」
カメラを起動してやろうとスマホ画面を見た時だった。
のスマホが震える。
画面には『脹相』の文字。
何故だかわからないが二人とも固まる。
バイブレーションの僅かな音がやけに大きく聞こえる。
「いいのか?」
「…今日は『らしくないこと』をする日ですから」
「そうか。でも、遅くなる、くらいは言っておいた方がいいのかもな。そうしないとアイツからの着信だけで電池がなくなる」