第5章 誰にも言えない甘い刻印
轟は出し切った熱を孕んだまま眠りについたの横顔を、ただ静かに見つめていた。
タオルで彼女の肌を汚す蜜を丁寧に拭いながら、その指先には言葉にできないほどの愛着がこもっている。
(……やっと、手に入った。もう、誰にも渡さねえ)
轟にとって前世や夢の事はもはや正直どうでもよかった。
彼にとっての真実は、物心ついた時から冷え切った家の中で唯一自分を「焦凍くん」と呼び、寄り添ってくれたが、今この腕の中にいるというその一点だけだった。
一方、は深い闇の中で、断片的な記憶の濁流に飲まれていた。
目の前で事切れた駆藤の、虚ろな瞳。
その後、AFOに囚われ逃げ場のない地獄で心も体も削られ続けた日々。
けれど、その絶望の果てに彼女のボロボロの心ごと深く愛してくれた「あの人」の温もりがあった。
『……次は、必ず君を一番に見つける、……愛してる』
耳元で響いた切なくも確かな約束。
ハッと息を呑んで目を覚ますと、視界の先には自分を覗き込む轟の端正な顔があった。
「……目、覚めたか」
「……っ、あ……焦凍、くん……」
目覚めた瞬間に視線がぶつかり、は先刻までの情事を思い出して一気に耳まで真っ赤に染まった。
あまりの居たたまれなさに、シーツを引っ張り上げて顔を隠そうとする。
「あ、の……私、……っ。その、ごめんなさい……っ」
「お前が謝ることなんてねえだろ。……が可愛い声を出すから……少し、やりすぎた……わりぃ」
轟は少しだけ困ったように、けれどどこか満足そうに微笑んで彼女の頭を優しく撫でた。
その手の温もりがの中に眠る「記憶」を刺激する。
(……どうしよう。私、駆藤くんをずっと探してたのに……)
は短い眠りの中で見ていた。
駆藤を失い、AFOに陵辱された絶望。
そこから救い出し愛してくれた「あの人」のこと。
『次は一番に見つける』
と約束してくれたあの人の声。
(……どうして。今の焦凍くんの熱に、こんなに安心しちゃうの……?)
駆藤への操を立てるべきなのに、幼い頃から自分を支え、今もこうして深く、重すぎるほどの愛を注いでくれる轟の存在が、の心を激しく揺さぶる。