第4章 剥落する日常、目覚める傷痕
職場体験が終わってからというもの、轟はこれまで以上にストイックに訓練に打ち込んでいた。
自分の中の「左側」を受け入れ、さらに保須での実戦を経験した彼は、どこか一段階上のステージへ進んだような、遠い背中を見せている。
その影響で、以前のように毎日一緒に下校することも難しくなり、は喜びの反面、言いようのない寂しさを抱えていた。
ある日の昼休み。
友人たちが委員会や部活の用事で不在だったため、は珍しく一人で食堂を訪れた。
空いている席を探してトレイを運んでいると、不意に聞き慣れた低い声に呼び止められる。
「。こっちへ来い」
顔を上げると、そこには轟、そして緑谷と飯田の二人が座っていた。
保須の事件で共に戦った三人だ。
「え、……。でも、焦凍くん。みんなと食べてるんでしょ? お邪魔しちゃうから……」
「構わない。お前が一人で食べてる方が気になる。……飯田、緑谷。いいか?」
轟が二人に視線を向けると、飯田は生真面目に眼鏡の位置を直し、緑谷は親しみやすい笑みを浮かべて大きく頷いた。
「もちろんだ! 轟くんの幼馴染なら、我々にとっても友人同然だ!」
「うん! 噂はかねがね聞いていたから、僕も一度ちゃんとお話ししてみたかったんだ」
「……あ、ありがとうございます」
恐る恐る、轟の隣に腰を下ろす。
ヒーロー科の、しかも体育祭で名を馳せた三人の中心に普通科の自分がいる状況に、の心臓は落ち着かない。
「紹介する。飯田と緑谷だ。……で、こっちが。俺の大事な……、幼馴染だ」
「さん、初めまして! 僕は緑谷出久。……あの、さっきも言ったけど、轟くんからよく君の話を聞いてるんだ。君のサポートが彼にとってどれだけ支えになってるか、とか……」
「えっ……? 私の話……?」
「ああ! 轟くん、普段はクールなのに、さんの話題になると急に饒舌になるから。……あ、今の内緒だったかな!?」
緑谷が慌てて口を押さえるが、隣で飯田も深く頷いている。
「本当だ! 『の作る飯は美味い』『は俺をよく見てくれている』と、折に触れて我々に自慢……失礼、報告してくれているぞ!」
「ちょ、ちょっと待って……焦凍くん!?」