第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園
一方、教室の喧騒を背に、轟は迷いのない足取りで爆豪の席へと向かった。
爆豪は机に足を投げ出し、苛立ちを隠そうともせずに鋭い視線を窓の外へ向けている。
「……爆豪」
「あぁ? ……んだよ、舐めぷ野郎。今すぐその面消せ。殺すぞ」
一触即発の空気が流れるが、轟は表情一つ変えずに言葉を継いだ。
「一昨日。……校舎でに何を言った」
その問いに、爆豪の眉間がさらに深く寄る。
「……は? 誰だそりゃ。テメェの痴話喧嘩に俺を巻き込んでんじゃねぇよ」
「はぐらかすな。泣いてた。……お前が何か言ったからだろ」
轟の静かな、けれど熱を持った糾弾に、爆豪はついに立ち上がり、轟の胸ぐらを掴まんばかりに身を乗り出した。
「しつけぇんだよ!! ……モブのことなんて、いちいち覚えてるわけねぇだろ。どけ、邪魔だ!」
爆豪の口から吐き捨てられた「モブ」という言葉。
轟は拳を握りしめ、冷徹な光を瞳に宿して爆豪を睨み返した。
「……そうか。ならいい」
轟はそれだけ言うと、踵を返した。
記憶にない。
爆豪にとって彼女は路傍の石ころに過ぎない。
その事実に安堵すると同時に、彼女を泣かせた男がその涙の理由すら知らないことに、轟の中の炎が静かに揺れた。