第2章 硝煙の戦場と、夕暮れの公園
体育祭と、そこでずっと探し求めていた彼と再会したという大きな波が去った夜。
は泥のような眠りの中で、いつも以上に鮮明な前世の夢を見ていた。
それは、彼女がまだではなく、みのりとして生きていた時代の記憶。
最愛の彼『駆藤』と出会い、レジスタンスの仲間になる日までの記憶の夢だったーー。
窓の外には、重苦しい灰色の雲が垂れ込めていた。
みのりはある大病院で看護師として働いていた。
その病院は、当時急速に勢力を拡大していたオール・フォー・ワン(AFO)の支配に屈せず、反旗を翻し続けていた数少ない場所だった。
「……みのりさん、またあそこの通りに怪しい男たちがいたわ」
「……ええ。嫌な予感がするわね」
同僚と交わす言葉は、常に緊張に満ちていた。
そして、その予感は最悪の形で的中する。
突如として、正面玄関が轟音と共に吹き飛んだ。
「AFOに従わぬ愚か者に死を!」という狂信的な叫び声と共に、けしかけられたヴィランたちがなだれ込んでくる。
「みんな、患者さんを奥のシェルターへ! 急いで!」
みのりは震える足で廊下を走り、動けない患者の手を引き、あるいは背負って、必死に安全な場所へと誘導した。
背後では悲鳴と、個性がぶつかり合う破壊音が響いている。
「大丈夫ですよ、すぐそこですから! 頑張って!」
最後の一人を送り届け、自分も避難しようとしたその時。
崩落した天井の向こうから、血の匂いを纏った略奪者がなだれ込んできた。
「逃がさねえよ、女!」
背後から太い腕に捕まり、床に押し倒される。
冷たく硬い床に背中を打ちつけ、視界が火花を散らした。
「……っ、やめて……放して!」
「いい声で鳴くなぁ! ちょうど女に飢えてたんだよ!」
抵抗するみのりの両手は、男の片手で頭上に押さえつけられた。
もう片方の手が、乱暴にナース服の襟元を掴んで引き裂く。
ボタンが弾け飛び、肌を刺す冷たい空気と共に、男の濁った欲望が剥き出しになる。
必死に身を捩り抵抗するが、力差は歴然だった。
服を剥ぎ取ろうとする手の感触、耳元に迫る不快な吐息。
(嫌……誰か、助けて……っ!)