第1章 灰色の雨と、血の誓い
迷いのない、強い言葉。
は胸の奥が温かくなるのを感じた。
前世の影に囚われて立ち止まっている自分とは対照的に、彼は「今」を生きるために一歩を踏み出そうとしている。
「……うん。喜んで。一緒に行こう、焦凍くん」
「ああ。……明日、迎えに来る」
少しだけ表情を和らげた轟を見送って、は家の中へ入った。
前を向き始めた幼馴染の姿は、今の彼女にとって何よりも眩しく、救いのように感じられた。
一人、夜道を歩く轟の足取りは静かだった。
街灯がアスファルトに落とす自分の影を見つめながら、彼は先ほどのの泣き顔を思い出していた。
「……誰なんだ、」
呟いた声は、夜の風に溶けて消える。
爆豪の名前が出た時の彼女の動揺。
(あいつの中に、俺の知らない誰かを見てる。……俺にも、話せない誰か……)
嫉妬、と言ってしまえばそれまでだ。
だが、それ以上に轟を苦しめていたのは、が自分にすら打ち明けられないほどの深い孤独を抱えているという事実だった。
自分だけがの隣にいて、彼女を支えられる。
それなのに、胸のざわつきは収まらない。
あんな風に泣く彼女を、自分はまだ救えていない。
「……どんな過去があろうと、関係ねえ」
轟は拳をぎゅっと握りしめた。
「昨日までのあいつが誰を愛してようが、……これからのの隣にいるのは、俺だ」
夜空を見上げれば、冷たくも美しい月が浮かんでいる。
爆豪勝己という男が持つ、前世の「駆藤」の熱。
それに対抗するように、轟は自分の中の炎を静かに、けれど熱く燃やし続けていた。
いつか、彼女が後ろを振り返らなくなるその日までーー。