第4章 海に漂う星屑のように
本当に、こんなことしか言えない。
これじゃあ全然届かない。
こいつの・・・陽菜多の孤独に・・・届きなんてしない。
「おにーさんにはわからないよ」
でも、そんな言葉で壁を作ってほしくなくて、
俺は・・・俺は・・・
心のなかからありったけの言葉をかき集める。
「わ・・・分かるよ」
「分からない・・・っ!」
「分かる」
正確には、『分かりたい』だ。
俺は、お前を『分かりたい』。
でも、どうしたらその言葉を、
こいつの心の奥に届けることができるのか、
俺にはわからなかった。
日が暮れる。
空には星、海にはさざなみ。
チラチラ光る港の明かりが、
暗い海に落ちた星屑のように瞬いていた。
波が時を刻み、
星がキリリと空を奔る。
「じゃあさ、キス・・・してよ」
言われて、俺はまた、息を詰めてしまった。
「ほら、無理しないで、」
振り仰いだ陽菜多。
その言葉が終わる前に俺は、
俺の唇で、陽菜多のそれを塞いでいた。
10秒・・・か、
20秒か
1分だったかもしれない。
唇がゆっくりと離れた。
「あ・・・おに・・・さん」
「初めてだ・・・でも、
唇に、男も女もねーのな」
少し照れ臭くなった俺は、
わざと海の方を見て言った。
「無理・・・しないでいいの・・・に」
陽菜多はそっと人差し指で唇をなぞっていた。
その目からは、さっきと違う涙が流れている。
灯り始めた白銀灯が、その涙を星屑みたいに光らせていた。