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海に漂う星屑のように

第4章 海に漂う星屑のように


【海に漂う星屑のように】

コスモワールドを出た俺達は、無言のまま、なんとなくブラブラと山下公園の方まで歩いてきた。

日は暮れかけていた。
海に黄昏が落ちてくる。

ぼんやりと欄干に両腕を乗せて海を眺める陽菜多に、
ほれと言って、俺は自販機で買ってきたコーラを渡した。
カラスが、まっすぐに宵闇迫る空を飛んでいた。

「いいな・・・」

ぽつりと、陽菜多が言った。

「何が?」
「カラスだよ」
「なんでだ?」
「自由じゃん」
「そりゃカラスだからな」

俺の頭を理由なく蹴飛ばすのも、自由ってわけだ。
思えがあれが最初だったな。

「カラスになりたい」
「なんで?」
「好きに飛んでけるじゃん」
「やめとけ、餌探すの大変だぞ」

それはあまり気の利いたセリフとは思えなかった。

「それでもいい」

陽菜多は言って、そして、押し黙った。
コーラの炭酸が、そこだけ妙に騒がしく喉を落ちる。

「あれさ、あの手紙」

ようやく陽菜多が再び話し始めた。

「ああ、悪かったな・・・」
「ん、ちがくて・・・あれ、好きな人からもらった手紙だったんだ」
「なんだ、やっぱ、ラブレターかなんかだったのか」
「違う」

言い切られ、ああ、やっぱり・・・と俺は思った。

「お付き合いできません、ていう内容・・・振られたんだ、俺」
「好きだったんだな、その女が」

また、沈黙が流れた。
波間にぴょんと、魚がはねた気がした。
カラスはもう、見えなくなっていた。

「男」
「は?」
「男なんだよ・・・相手」
「え?」
「はは・・・おかしい・・・よね・・・
 カイトも・・・そう思った・・・かな」

陽菜多の目から一筋、涙が流れていた。
それは、かすかに残ったオレンジの陽光を映してキラリと光った。

なんて、言っていいかわからなかった。

「いや・・・おかしくは、ねえんじゃねえか・・・?」
だから、かろうじて、言った。
まるで、木に竹を接いだような、ぎくしゃくとした、言葉だったと自分でも思う。

「無理しなくていいよ」

そんな言葉しか吐けない俺に対して、その言葉は優しくて・・・
あまりにも優しくて。

そして、『独り』だった。

「無理してない」
「いいよ」

陽菜多が目の涙を拭って笑った。
無理矢理笑っているのがよく分かった。
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