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【呪術廻戦】誰も知らない

第9章 逃走と分与


天元が100年近く八重と過ごす中で聞いてきた八重自身の話を話して聞かせる。
八重は黙って聞いているが、どこかしっくりこない。
八重が不老不死になったところまでを話たところで、八重は手を挙げて制した。

「ありがとうございます。だいたいわかりました。覚えておきます」

思い出したとは言わない。

「本当に覚えてないのか?」

「はい。今、天元様から聞いても自分ごととは思えないです。でも、天元様がそうおっしゃるならそうなのでしょう」

「寿命を分けた時、『一層』と言っていた。あと何層ある?」

「寿命を分けたのはこれが初めてなので、あと六層あります」

「…もうその力は使うな。人でいられなくなるぞ」

「…わかっています。私も人でありたいと思ってます…ただ、あの子たちが産まれてしまったのは私のせいです。あの子たちには少しでも長く生きてほしかった…」

天元はもうそれ以上は何も言わなかった。
起こってしまったことは、もうどうにもならない。
これから起こることも、きっとどうにもならない。
それが八重自身の選択なのだから。

「これからお前はどうする?まだ比丘尼を続けるのか?」

「いえ、もう比丘尼はやめます。これからの時代は比丘尼でいる方が目立ってしまいますから」

「それがいい。…ここに居たっていいんだよ?」

天元の声が優しくなる。
建前じゃないことがわかる。
八重の頭には天元と過ごした100年あまりが思い出される。
とても穏やかで、充実した日々だった。
戻れるものなら戻りたい。
しかし、もう戻ることは出来ない。
八重はもう自分のために生きてはならないと思った。
せめて、九相図が報われるまでは。
贖罪を続けなくては。
そうしなければ八重自身の心が壊れてしまいそうだった。

「…わかった。そう八重が決めたなら。私はこれからこの場所の上に呪術師の学び舎を作るつもりだ。何か呪霊で困ることがあれば来るといい。私とこうやって会うことは難しくなるかもしれないが、手を貸してやれるようにしておこう」

「何から何まで、ありがとうございます…」

最後に八重は天元に申し出て、封印された九相図の標本瓶を今一度胸に抱きしめてから薨星宮を後にした。
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