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【呪術廻戦】誰も知らない

第8章 【羂索】八百比丘尼


「…少し出てくる」

急に部屋を出ていく脹相に羂索は

(来たか…)

と思った。
九相図を盗ると計画した時からアレが動くことは想定していた。
ただ思っていたより。

「早かったな」

150年前に対峙した時にわかっていた。
アレは冷静沈着なように見えて、その実、感情に動かされる女であると。
思わず笑みが零れてしまうというものだ。

150年前、初めて相見えた時。
齢17、8の若い見た目。
年齢にそぐわぬ落ち着いた雰囲気。
理路整然とした語り口。
明らかに異質だった。
思考が八百比丘尼に至ったのが彼女が去った後だった。
正直、惜しいことをした、と思った。
もっとこの場に留めて観察すべきだった、と。
しかしすぐに思い直した。
母体がこの手にあるうちは好機の可能性はある。
だから、母体の研究を優先させた。
そしたら、どうだ。
1年後にはのこのこと現れるではないか。
情の厚さとは掌でよく転がる玉だ。
これが笑わずにいられようか。

もともと定期的にやってくる母体の母親がうっとおしくて人間を遠ざける結界を張っていた。
それを涼しい顔で入り込む。
あの女は人間じゃない。
人間の形を成した異質。
羂索はカマをかける。
ソレの反応を観察する。

(…いいぞ…すごく、いい…!)

ソレの中で羂索への疑惑が確信に変わった時、少しの時間泳がせてみる。

(そうだな…時間にして5分といったところか)

ソレは一発で置き場所を見抜いた。
瞬時に状況を把握し、自らの精神を立て直し、救えるものを救おうとする。

(…私は、コレが、欲しい…!)

ほとんど衝動だった。
声を掛ける。
言葉で揺らす。
ソレは一切ブレなかった。
それでも揺らす。
認めさせたかった、正解だと。

しかし、ここで1番の想定外。

「…動くな…!」

彼女が唸る。
その瞬間、体が動きを止めた。
息ができない訳ではない。
鼓動が止まる訳でもない。
ただ彼女に向かって動くことができない。

(…呪言か?いや、呪力は感じられない)

彼女を見る。
瞳の色が暗くなっている。
全てを引き付けるブラックホールのように。
全てを押し潰す深海のように。
何者も太刀打ちできない、絶対的な力。
動きを止められているのに震える。
それは恐怖か。
それとも歓喜か。
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