第5章 対峙と邂逅
丸二日かかってようやく目的の寺に着いた。
ここは呪術師が開いた寺である、と旅の途中で聞いていた。
明治に入って廃仏毀釈が行われている昨今、寺を新しく開くのは容易ではないはずだ。
けれども、それを押してでも開いた寺である。
きっとここならば娘を何とかしてくれるだろう、と八重は思った。
門をくぐる。
八重は声を上げた。
「もし。もし!」
寺の中から男性が出てくる。
剃髪はしていない。
ただ額に真一文字に縫われた傷跡が印象的だった。
「どうしましたか?」
男は穏やかな声で言う。
人の良さを感じて八重は安堵する。
「私は旅の比丘尼でございます。山向こうの町に立ち寄りましたところ、不可思議な現象に巻き込まれている娘がおりまして…」
ここで娘には聞こえないよう八重は声を潜めて「呪霊が関係しているかもしれません」と言った。
男は一瞬を目を開いたがすぐに口角を上げた。
「左様ですか。では、中で詳しくお話を聞きましょう」
男は寺に二人を招き入れた。
二人は招かれるまま寺に入っていく。
これが八重と史上最悪の術師、加茂憲倫との邂逅であった。