第27章 【脹相】へる日々
そしてまた八重は皿洗いを始めた。
いや、先程よりもスピードは上がっているよう見えた。
(やはり作業の邪魔をしていたのか…)
少し気持ちが落ち込むが、気になるのは八重の仕事のこと。
「いつもこの量を洗っているのか?」
静かに訊けば、「今日は“ぱーてぃ”だったのでいつもより少し多いでしょうか」と八重は何てことはないというように言った。
その後も「しかも、この機械がとても優れておりまして…」とシンクの横にある機械の説明までし始める。
しかし、いくらその食洗機が素晴らしいものであろうと脹相の満足するものではなかった。
「これで今日の仕事は終わりか?」と訊けば、八重は少し考えてから「これが終わったら皆さんが浴室を使い終わる頃なのでそちらの清掃に入ります」と言った。
(まだ働くのか…)
「脹相も今のうちに入ってくださいね」
そう八重に笑いかけられても脹相はその好意を素直に受け取れずに黙る。
そんな脹相を八重は不思議そうに覗き込んだが、すぐにまた視線を食器に戻して作業に戻った。
「その後は?」
幾分低くなった脹相の声に八重の身が固くなったようだった。
「その後は…明日朝から干せるように洗濯物を洗っておこうかと…」
八重の口ぶりも少し重くなった。
脹相の意図を汲み始めてるのかもしれない。
「いつ休むんだ?」
遂に言葉に詰まった八重。
「お前はいつ休むんだ?」
畳み掛けるように脹相は言葉を重ねる。
「今日だけじゃないだろう?朝から晩まで…一日中…」
八重は黙り込んだままその言葉たちを聞き、そして食器を洗う手を止めた。
「……私は休まなくても動けます…」
そう静かに呟いた。
「私は戦いには参加できませんのでこのくらいはしたいんです」
静かで、しかし頑なな八重の口調は聞き覚えがある。
「このくらい…?俺はお前に悠仁の食事を、としか言っていない」
「皆で生活しているのですから、それだけという訳にはいきません。私は私の出来ることをやっています」