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【呪術廻戦】誰も知らない

第27章 【脹相】へる日々


しかし、ここに来てそれは当たり前のことではないのだと思い知らされる。
八重は高専全員分の食事は作るし、高専全体の雑用までやる。
それを新しい当たり前にしつつある。
それは八重にとって今までの当たり前が上書きされてしまうみたいで抵抗があったが、そういうものだろうと自分を諌めることはできた。
しかし今日、そこに新たに加わろうとする“当たり前”。
当たり前のように八重の名を呼ぶ五条。
当たり前のように八重に話しかける五条。
当たり前のように八重の抱きしめる五条。
この当たり前を自分は看過できるだろうかと考えて、否できないとすぐに否定する。

(どうして俺はそれを許せない…?)

今日の五条の立ち振る舞いを見ていれば誰にだって飄々として軽口を叩き、距離感なんてものはないに等しいのはわかっている。

(なのにどうして…俺は腹を立てているんだ…?)

その答えが書いてあるわけではないのに八重の背中を見る。
あの小さい背中が五条に包まれるのは当たり前のことなのか。
八重はそれも当たり前にしてしまうのか。
自分はそれを当たり前にしてしまえるのか。
脹相にはわからなかった。
わからないからそっと八重に近づいて、いつもの距離から一歩更に近づく。
そうして五条がやったように後ろから抱きしめるまではいかないが、八重の両脇のシンクに手をついて八重の背中に身体を寄せる。
八重は一瞬食器を扱う手を止めたが、すぐにまた動かし始めた。
触れるまではいかない。
けれど、少しだけお互いの体温を感じるようなそんないつもの当たり前を超えた距離。
それを受け入れてくれたようで少し心地良い。
いつもより八重の匂いを強く感じる、そんな距離。
この距離に五条もいたと考えるとやはり脹相の腹の奥はムカムカとした。
それを抑えるように深く溜息をついた。

「どうしましたか?」

あんな深い溜息をつけばそんなことを問われるのは当たり前なのだが、では「どうした?」と訊かれてもすぐに答えられような回答は脹相の中にはなかった。
そうして少しの間考えて、出てきた言葉は「俺達がいない間、五条悟と何を話した?」だった。
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