第27章 【脹相】へる日々
食器が音をしないよう丁寧に扱うなど八重の小さな優しい手だからできるものとばかりに思っていた。
しかし、やってみれば自分にもできるではないか、と脹相は再び目から鱗だった。
八重と同じようではない。
かなり気も遣う。
しかし、できないわけではない。
自分にも壊さないように扱うことができるではないか。
その事実は脹相の気持ちを少しだけ楽にした。
そうして、食堂にあった全ての食器を盆に乗せると再び厨房の八重のところへと戻った。
八重はもう既に先程持って行った食器を洗い始めている。
洗いながら「ふふ」っと息を漏らして笑っている。
「何が可笑しい?」
よもや自分の手際を笑われているのではとも思ったが、八重はすぐに「悠仁くんがたくさん食べてくれたのが嬉しかったので、つい」と笑顔のまま教えてくれた。
確かに虎杖の食べっぷりは見事なものであった。
最後の方は「八重さんの料理を残すわけにはいかない!」と使命感まで燃やして、しかし最後まで美味しい美味しいと連呼しながら。
本当にいい子に育っている(脹相が育てたわけではないが)。
そんな虎杖は脹相にとって誇らしい(脹相が育てたわけではないが)。
「悠仁は育ち盛りだからな」
それを聞いて八重も優しく微笑んだ。
虎杖はこれからだってどんどん成長するだろうと脹相は思っている。
兄である自分よりも強く、逞しく、そして優しく。
もしかしたらその時自分は隣にいないかもしれない。
けれど、代わりに八重が隣にいてくれれば、それでいい。
運んできた食器を八重に渡せば、八重は「ありがとうございました。あとは私がやりますので」とやはり脹相を帰そうとする。
しかし、何だか帰る気にもなれない脹相は黙って八重が食器を洗うところを後ろから眺めていた。
黙々と作業をする小さな背中。
呪霊狩りをしていた時もよく目にした風景だ。
その時はそれが当たり前だと思っていた。
脹相と虎杖が呪霊を討伐しに行き、帰って八重の温かい食事を食べながら八重と虎杖の会話を聞き、気付くと少しだけ顔が綻んでいる。
それが当たり前だと。