第27章 【脹相】へる日々
八重を見れば困ったように眉を下げている。
(俺が手伝えば困るのか…?)
一瞬止まった手に八重は優しく手を添えて食器を取り上げた。
添えられた手の温もりに脹相の動きは更に止まった。
「…あまり乱暴に扱うとお皿が欠けてしまいますから…私がやりますので…」
そう困ったように笑うと、八重はまた食器を盆に乗せ始める。
(なるほど…)
食器は置けば音が鳴るものだと思っていたが、八重がやればほとんど音がしない。
盆に乗せる時だって、だいたい大きさを揃えて乗せるのでたくさんの食器が乗っていく。
片付けなど片付けばいいと思っていた脹相にとっては目から鱗であった。
日々の家事にもそこまでの心配りをしているのかと感心もした。
八重には敵わない。
そう思っていたところであったが、唯一自分でも手が出せるところがあった。
なまじ食器を乗せるのが上手いせいで、または選んだ盆が大きいせいで、大量の食器が乗った盆は八重には荷が重い。
「運ぶ。こんなに乗っていては重いだろう」
それだけ言うと盆の柄に手をかけて軽々と持ち上げた。
「え、あ、ありがとうございます」
それは本当に助かったのだろう。
八重は素直に礼を言い、自分は手に持てる食器だけを携えて厨房まで先導した。
厨房に入ると、隅にあるシンクの脇に自分が持ってきた食器を置いて、脹相にもここに置くように言った。
言われた場所に重たい盆をドスリと置いた。
きっと八重はすぐに暇をだそうとするだろうが、そうはさせない。
「他にも盆はあるか?」
そう尋ねながら自分でも探す。
「残りも持ってくる」
食堂にはまだまだたくさんの食器があった。
一回運ぶのを手伝っただけでは足りないだろう。
しかし八重は「え…と」と言葉を濁し、どうやって脹相にやめさせようかと考えているようだった。
脹相は視界に別の盆を捕らえるとすぐ手に取った。
「割らないようにする」
きっと皿が割れるのが心配なのだろうからそれだけ言って食堂に向かった。
そして、残っている食器を片付ける。
今度は先程の八重がやっていたのを真似して、だいたい同じ大きさの食器をまとめて、重ねる。
食器が強くぶつからないように、大きな音を立てないように気をつけながら。