第27章 【脹相】へる日々
「八重」
さすがにこの状況に耐えかねた脹相は諸悪の根源である五条よりも話の通じる八重の名を呼んだ。
「ゆっくりこっちに来い。後ろは見るな」
一秒たりとも視界に入れて欲しくない、というのが本音なのかどうかは分からないがその指示に八重は素直に従う。
自分の横に収まる八重の姿に脹相の頭に上った血も治まっていく。
それでも曲がったへそはなかなか治らない。
五条のおかえりパーティが始まって、いくら八重がせっせと料理を運んでも八重と目を合わせることもできず、ただ運ばれてくる料理を黙々と食べた。
それでも八重はいつもと変わらず隣にいる。
脹相が料理を食べるのをいつもと変わらず温かい目で見てくれる。
「脹相は五条さんを知っていたんですか?」
先程、五条悟本人だと知らずにずっと一緒にいた八重が、隣にいるその人が五条悟だと知った時の反応は今まで見たこともないようなほど奇っ怪で、今まで見た中で一番人間らしかった。
思い出して更に面白くない。
「知っているも何も、渋谷での封印前に戦っている。もっとも俺は五条との戦いはどうでもよかったからそれほどやりあってもいないがな…」
「そうだったのですね。だから、五条さんはあのような第一声だったのですか…」
「まぁ、そうだろうな」
「五条さんはお強いそうなので、脹相に何事もなくてよかったです」
八重は脹相が渋谷で呪霊側についていたことを知ってもそれについて何か言うことはない。
人をたくさん殺している。
虎杖も一度殺しかけた。
それを知ってもなお脹相の心配をしてくる。
(俺はそのようなもの向けられる資格はない)
八重が絶対的に脹相を肯定すればするほどそのような思いに駆られる。
それなのに心はどこか救われていて、自分の中の相反する思考と感情がやけに居心地悪くて、更に八重を見れなくする。
脹相が八重からデザートのプリンを受け取ったところに、「八重さーん」と今まで五条と話をしていた虎杖がこちらもまたプリン片手に戻ってきた。