第27章 【脹相】へる日々
しかし、そんな脹相を揺るがす出来事は思いのほかすぐ起こった。
それは五条悟の封印を解くために高専関係者と共に埼玉まで遠出した後のことだった。
結局、封印を解いてもそこに五条はおらず、彼がどうなったかも分からず仕舞いで高専に戻ることとなった。
戻った頃には夕時に差し掛かり、もうそろそろ八重が夕食の準備を整えているであろうことが皆の脳裏にあるためか、誰とも言わずに足は食堂に向いていた。
そして、食堂の扉を潜った先にいたのは、にこやかに食事を並べる八重と渋谷で戦った時とは打って変わって楽しそうにしている五条だった。
「よー、おかえりー」
数週間封印されていたのが嘘のように、ただお留守番していたみたいな出迎えをする五条に、高専メンバーは固まり、その後「「「五条先生ー!!」」」と高々とその名を呼んでいた。
その数秒後、それにも勝るほどの声量の奇声に驚き、それを発したのが八重であることに二度驚いた。
そして、その後だ。
五条が八重の後ろに回り、八重を後ろから抱きしめた。
何故そんなことを今するのか脹相には理解できなかった。
しかし、それを見た瞬間、強い力で腹を押され、顔の痣に血液が一気に集中する感覚が走った。
(……八重に近づくな)
思わず鋭くなった視線に誘われるように五条が脹相の方を向く。
「お前、なんでここにいんの?」
おおよそ先程の陽気な出迎えをした同じ人物から発されているとは思えないような冷たい、それこそ渋谷で相対した時のままのトーンで投げかけられる。
「俺は悠仁の兄だからだ…」
脹相の中では至極当然な答えである。
しかし、ここ数週間の出来事など知らない五条に意に介せという方が無理がある。
「は?訳わかんないんだけど?祓うよ?」
声のトーンは変わらずその碧眼は更に鋭くなる中、虎杖が間に入ってようやく事なきを得た。
しかし、未だに五条は八重を離そうとはせず、あまつさえ頭に顎など乗せ始め、挑発するような視線を脹相に投げてくる。
(……八重に触るな…!)
脹相の頭には更に血が上り、痣から血液が溢れるのを何とか押し留める。
そんな様子も五条は楽しんでいるようでそれが更に脹相の神経を逆撫でる。