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【呪術廻戦】誰も知らない

第27章 【脹相】へる日々


地下室から高専校舎に戻り、すぐに八重は虎杖の元に駆け寄った。
そして、八重がその手を取ると絶望に沈んでいた虎杖の意識がこちらに戻ってきて、言葉を交わせば微かにでも笑うことまでできた。
八重が食事を振る舞えば場の雰囲気は良くなり、皆が前を向き始める。
そんな様子を見ていれば脹相の中の自らを嫌悪する気持ちも少しずつ散っていくようだった。

(やはり八重は人の中にいた方がいい…)

もともと比丘尼として人々に寄り添い生きてきた人間だ。
それを加茂憲倫や九相図と関わってしまったばかりに浮世を捨て、150年もの間九相図に傾倒させてしまった。

(八重は俺と一緒にいるべきではない…)

虎杖が八重に見せる態度や表情はとても懐いているように見えた。
いや、それ以上の感情があるように感じる時すらあった。
八重も虎杖と話している時の方が笑顔でいることが多い。

(悠仁こそ八重と共にあるのに相応しい…)

自分の大切な者たちが共に幸せになってくれるなら、脹相はいくらでもその礎になることは厭わない。
これからの戦いで二人の幸せを守れる場面があるのなら脹相は喜んでその命を差し出す覚悟はもう既に薨星宮でできている。
今後はそれを達成し得る力をつけていくだけに注力していけばいい。

「脹相もどうぞ」

いつの間にか八重が目の前に立ち、湯気の出る味噌汁を差し出していた。
受け取って、口をつける。
味は薄いのに口に広がる風味は豊かないつもの八重の味噌汁。

「…薄いな」

いつもそんな感想しか言わないのに八重はいつも少しだけ顔を綻ばせる。
こんな日々の積み重ねで少しずつ日常に戻っていく。
今もこれからも。
例え自分がいなくなっても。
それまではこの日常を積み重ねていけばいい。

脹相はそう思っていた。
それなのにそれからの八重は高専での雑用を一手に引き受け、朝から晩まで身を粉にして働き始めた。
まるで何かに追い縋るような、まるで自らを忙殺するような、その必死な働きはまた自分を犠牲にしているようで脹相としては見ていて気持がいいものではなかった。
それでも声をかけなかったのは、八重がそうして自分の居場所を守ろうとしているとも感じていたからだった。
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