第4章 天元様
「天元様、今までありがとうございました。私はここを出ようと思います」
「そうか。これからどうするんだい?」
天元に特に驚いた様子はなかった。
どこかで予想はしていたのかも知れない。
ついに来たかと穏やかな顔をしている。
「出家して比丘尼になり、国々を巡ろうと思います」
「比丘尼か…いいんじゃないか?一処に留まらないから不老不死も隠しやすい。して、その心は?」
「困っている人を少しでも助けられたら、いつかは報われるのかと」
「そうだな。少なくとも八重の心は報われるかもな。すまないね、結局不老不死の解き方については何もわからず終いだった」
天元は八重が人として死にたがっていることをわかっていた。
それを叶えてやりたかったが、100年色々調べても答えに辿り着けなかった。
「そのことについても、一度海へ行ってみたいと思います。わからないこととは向き合ってみたいです」
そう言う八重は真っ直ぐと天元を見つめた。
その瞳にはしっかりとした決意と信念が見て取れた。
「ハッハッハ、ここに来た時より随分強くなったね」
「天元様のおかげです」
「海に引き込まれんじゃないよ?」
「はい」
「私もこれから東の筵山麓でこの国の結界の基底を成そうと思っている。困ったことがあったら訪ねておいで」
「はい、ありがとうございます。ありがとう、ございました」
頭を下げた八重は鼻を啜った。