第23章 いとほし日々[前編]
移動しながら、脹相から高専では九十九が死に、天元が羂索の手に落ちたことを知らされた。
八重としては脹相が獄門疆・裏を携えて薨星宮から出された時点で予想はしていたので衝撃は少なかった。
死滅回游参加組の方では、東京第一コロニーで伏黒の姉が受肉泳者だったとわかり、伏黒に宿儺が受肉してどこかへ去っていったとのことだった。
今は事実上、死滅回游は頓挫したようで泳者だった高専一行は帰ってきているらしい。
ただ、不幸中の幸いで天使の受肉泳者を仲間にして連れてきていて、獄門疆を開ける手筈が整った。
ただ、天使の受肉泳者も片腕を無くす重傷を負っているので今すぐにとはいかないという現状だった。
高専校舎に入ると、椅子に座ってうなだれている虎杖が真っ先に目に入った。
八重はすぐに駆け寄ると、うなだれた虎杖の顔が見えるくらい低く跪く。
顔や身体は切傷だらけで、指も一本なくなっている。
しかし、傷を受けたのは昨日のことなのにもう治りかけてきているのには不老不死の八重から見ても驚くものがあった。
八重が虎杖の目を覗くと、虎杖の焦点がゆっくりと八重に合っていった。
「……八重さん……俺…」
苦しそうに顔を歪める虎杖に八重は手を取り、擦った。
「脹相から聞きました……大変、でしたね…」
「っ……」
「落ち着いたら何か作りますね」
そうしてそのまま佇んでいた。
しばらくすると、虎杖が「……八重さん」と呼びかけた。
「はい、何でしょう?」
「…八重さんの、味噌汁食いたい」
そう伺うようにこちらを見る目が愛らしく感じて、八重は優しく微笑むと「はい、喜んで」と返事をした。
すると虎杖は「…ふは」と息を漏らした。
「…それ、居酒屋のやつじゃん」
八重にそのツッコミの意味はわからなかったが、弱々しくも虎杖が笑ってくれたのには安心して、重ねた手に少しだけ力を込めて握り、擦ってから食事の準備に向かった。