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短編【鬼滅/ヒロアカ】

第13章 何があっても…(鬼滅の刃/炭治郎夢)


視界の端に、深紅の髪と、市松模様の羽織が見えた。
幻覚ではない。彼は、本当にここにいる。

「炭、治郎……?」

掠れた声で、彼の名前を呼ぶ。
しかし、その声は彼に届く前に、夜の静寂に吸い込まれていった。

炭治郎は、横たわるあたしの姿を見て、目を見開いた。
彼の瞳が、深い悲しみと怒り、そして……計り知れない恐怖に染まっていくのを、あたしは微かに捉えた。

「なんて、酷い……! どうして、こんな……!」

彼は膝をつき、震える手で血に染まったあたしの身体を抱き上げた。
彼の身体から放たれる「動揺」の匂いが、あまりに強烈で、あたしの鼻を突く。

「大丈夫! 今、手当をするから! 死なせない、絶対に!」

炭治郎は、懐から布を取り出し、傷口に押し当てた。
痛熱い感覚が走るが、それ以上に、彼の手の温もりが心地よかった。

「炭治郎、落ち着いて……っ。あたしは、まだ……」

「落ち着いてなんていられない! あなたの身体から、生命力が消えかかっているのがわかるんだ! ……こんなにも、傷ついて……!」

彼の声が、震えている。
いつもなら、どんな時でも冷静さを失わない彼が、今はまるで子供のように狼狽えていた。

「俺が……俺がもっと早く来ていれば、こんなことには……!」

炭治郎の瞳から、大粒の涙が溢れ出し、あたしの頬に落ちた。
彼の、濁りのない、暴力的なほどに純粋な悲しみ。
それが、身体の芯まで冷え切っていたあたしの心を、温めていく。

「炭治郎、泣かないで……。鬼は、倒したよ……」

「鬼なんて、どうでもいい! あなたが……あなたが無事じゃなきゃ、意味がないんだ!」

彼は、あたしを抱きしめる力を、強めた。
その強さは、まるで、あたしがどこかへ消えてしまわないように繋ぎ止めようとしているかのようだった。

「俺は、嘘をつけない人間だって知ってるだろう? ……だから、今から言うことにも、一切の嘘はないよ」

彼は、あたしの耳元で囁いた。
その低い声は、いつもの彼のものではなく、獣のような、底なしの執着を帯びていた。



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