第12章 きっかけは事故【ヒロアカ/出久夢】
雄英高校の廊下は、いつも慌ただしい。
普通科に通うあたしは、午後の授業に必要な資料を抱え、少し急ぎ足で曲がり角へと差し掛かった。
「あ、危ない――っ!」
短い制止の声と同時に、視界がぐるりと回る。
勢いよくぶつかった衝撃で資料が宙を舞い、あたしの体は後ろへと大きくよろけた。咄嗟に目を閉じ、冷たい床への衝撃を覚悟する。
けれど、あたしを襲ったのは硬い床の感触ではなく、男の子の体温と、柔らかな唇の感触だった。
「…………え?」
おそるおそる目を開けると、そこには至近距離で固まっている緑谷出久くんの顔があった。
勢いよくぶつかった際、彼があたしを庇おうと抱きとめた拍子にバランスを崩し、そのまま覆いかぶさるような形で、あたしの唇に彼の唇が重なっていたのだ。
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