第11章 『 "音"と名前のない関係 』
体育館裏。
部活終わり、荷物をまとめていた凛人の横に、蓮がいつもの軽い調子で近づいてくる。
「でー?」
ペットボトルを開けながら、にやっと笑う。
「どうなった?」
「……なにが。」
「咲に決まってんだろ。ちゃんと告った?」
凛人は一瞬黙って、それから小さく息を吐いた。
「……好き、は言った。」
「は?」
蓮が思わず吹き出す。
「“は”ってなんだよ、“は”って。」
「ちゃんとした告白は、試合のあとにする。」
バッグのファスナーを閉めながら、静かに続ける。
「勝ってから言いたい。」
蓮はしばらく凛人を見て、それから少しだけ笑った。
「……まぁ、お前らしいな。」
「でも、もう中途半端にはしない。」
その言葉に、蓮は小さく頷く。
「ならいい。」
そして、少しだけ声を低くして言う。
「泣かせんなよ。」
凛人は一瞬目を細めて、短く答えた。
「泣かせねぇよ。」
「……いや、たぶん泣くぞ?告白されたら。」
「そういう意味じゃねぇ。」
少しだけ笑いながら、凛人は肩をすくめる。
「悲しい方の涙は、もう流させない。」
蓮が少し肩をすくめながら、わざとらしくため息をつく。
「……まぁでもさ。」
凛人の横顔をちらっと見て、にやっと笑った。
「あの日、帰ってきたとき、咲――目、真っ赤だったけどなー。」
凛人の手が一瞬止まる。
「なんなら、顔も真っ赤だったし。」
わざとらしく首を傾げる。
「お兄ちゃん、心配だな〜?笑」
「……うるせぇ。」
短く返しながらも、少しだけ視線を逸らす凛人を見て、蓮は小さく笑う。
「ちゃんとフォローしたんだろうな?」
「した。」
「泣かせたまま帰してねぇよな?」
凛人は少しだけ黙って、それから低く答えた。
「……抱きしめた。」
その一言に、蓮が「へぇ」と軽く眉を上げる。
「で?」
「“待っててほしい”って言った。」
少しだけ真剣な声になる。
蓮はしばらく凛人を見て、それからふっと笑った。
「……なら、いい。」
そして、いつもの調子に戻って肩を軽くぶつける。
「負けんなよ。妹、待たせてんだから。」